疑問     その二



 「む〜・・・」

 本日青学男子テニス部は試合。
 マネージャーであるはボードを片手に目の前の試合を見てうなっていた。

 「ちゃん、どうしたにゃ?」
 「あ、英二先輩。」

 の様子を心配して菊丸が声をかける。
 は菊丸のほうを見ると丁度良い所に来たとばかりに彼の元に駆け寄った。

 「先輩!あのですね、私どうしてもわからないことがあって・・・」
 「にゃに?」

 なんとなく嫌な予感がしたが聞き返す菊丸。

 「あのですね、桃ちゃんってよく飛んでからスマッシュするじゃないですか。」
 「あー。ダンクスマッシュ?」
 「それです。それでですね・・・
  『ダンクスマッシュ』と『ジャンピングスマッシュ』ってどう違うんですか?」
 「え゛?」
 「ですから・・・」
 「あ、いや。それはわかってるんだけどね。え〜っと・・・」

 菊丸は頭を抱え込んで悩み始めた。
 せいぜい聞かれるとしたら『何であんだけ高く飛び上がることができるんですか』あたりだと思い込んでいた彼。
 それでも『桃だから』としか答えられなかっただろうが・・・

 「う〜んと・・・どう言えばいいのかにゃ・・・」
 「どっちも空中に飛び上がってやるスマッシュじゃないですか。違いはあるんですか?」
 「え、え〜っと・・・」



 「ちゃん。」



 「にゃ!?不二!」

 いつものごとく、突然後ろから現れた不二。
 驚いて顔を引きつらせている菊丸に対し、ニコニコと爽やかな笑顔でいる不二のコンビはある意味面白い。

 「そんなことは英二に聞いてもしょうがないよ。説明できないだろうから。」
 「う゛っ!」
 「そうなんですか・・・」
 「ちゃん・・・(泣)」

 二人にあんまりなことを言われて、菊丸は少しばかり目元に涙があふれ始めている。
 はそのことにまったく気づいていない。
 不二は気づいてはいるのだろうが、あえて無視しているらしい。

 「クスッ。いい?こういうことはやっている本人に聞かなくっちゃ。」

 ニコニコと笑いながらスッとある方向へ指差す。
 がそれをたどってみると、丁度試合を終えてコートから出てくる桃城を目に捕らえた。
 とたん、見る見るうちにの顔が明るくなった。

 「そうですね!桃ちゃんならきっと答えられますよね。お水渡してくるついでに聞いてきます!
  不二先輩、ありがとうございました!」
 「ううん、別にいいよ。がんばってね。」

 爽やかな笑顔で手を振りながら見送る不二と、隣で少しばかり青い顔をしている菊丸。
 はそんな二人の様子に気づくことなくとてとてと桃城の元へと走っていった。

 「・・・不二。」
 「ん?なに、英二?」

 菊丸はが去った後に自分の隣に立つクラスメイトに声をかけた。

 「桃に答えられるのかにゃ?」
 「クスクス。さあ?どうだろうね。」

 楽しそうに笑っている不二の様子に菊丸は少し眩暈を覚えていたと後日パートナーの大石にもらしていたらしい。












 さて、不二と菊丸の元を離れて桃城の方に駆け寄っただったが・・・

 「ねえ、どう違うの?」
 「う〜〜〜〜〜〜〜ん・・・」

 質問された桃城は先程の菊丸と同じように唸り声をあげていた。
 なぜか一緒にいる越前はニヤニヤと笑っていて一向に助けようとする気がない。

 「なあ、越前。どう説明すればいいんだ?」
 「そんなの知らないっスよ。桃先輩いつもかましてるんだから知ってるんじゃないんっスか?」
 「越前〜・・・」

 相変わらずこの後輩は先輩を敬っているような態度を見せない。
 むしろからかって楽しんでいる。
 それも毎度のことなので桃城は越前からの助けを早々にあきらめるとの方に向き直った。

 「ん〜・・・そうだな。
  『ジャンピングスマッシュ』はただ飛び上がってやるスマッシュだけど、
  『ダンクスマッシュ』はももっとこう、ドーンと・・・」
 「『ドーンと』・・・?」

 自分の言葉を繰り返すがの顔には代わらずデカデカとハテナマークが書いてある。

 「ダ――!どう言えばいいんだ!」

 たまりかねてワシワシと頭を書きながら叫んだ桃城。
 越前は隣で肩を震わせている。

 「ん〜。つまり、『ダンクスマッシュ』の方が『ジャンピングスマッシュ』よりも
 迫力と威力があるってこと?」
 「まー・・・そんな感じかな?な、越前。」
 「そうなんじゃないんっスか?エキスパートがそう言うんだから。」

 越前に同意を求めると欲しかった答えが返ってきたので桃城も安心した顔をした。
 しかし、これで終わりではなかった。

 「ん〜・・・じゃあね。『ダンクスマッシュ』と『ジャンピングスマッシュ』の見分け方は?」
 「「え゛?」」

 またもや投げかけられる質問。
 やっと開放されたと思っていた桃城の顔が再度引きつることとなる。
 それでも今度ばかりは逃げ出そうとした越前の襟首をつかむことは忘れない。

 「おい!一人で逃げるんじゃねー!」
 「いやっスよ。桃先輩一人で答えてくださいよ。ダンクスマッシュの専門家でしょ!?」
 「うるへ!いいから付き合え!」

 結局二人は一生懸命説明しようとしたが、うまくに理解させることはできなかった。
 そして、そんな三人の様子を楽しそうに観察していた人物がいたことは桃城と越前は知ることはなかった。




















結果、『ダンクスマッシュ』と『ジャンピングスマッシュ』の違いは謎のままとなった。












<アトガキ>

管 : 疑問シリーズ第二段!
越 : 前回のやつと比べると大分短いね。
管 : だね。なんか短くなっちゃって。
越 : で?今回の疑問は『ダンクスマッシュ』?
管 : そう!
    本当に、『ダンクスマッシュ』と『ジャンピングスマッシュ』の違いってわかんないんだよね〜。
            (ちらりと桃城を見る)
桃 : だからそれをオレに振るなよ!
管 : だっていつもやってるの君でしょ!専門家に聞くのは基本じゃない!ねー?リョーマ君。
越 : まー、そうなんじゃない?普通は。
管 : だよねー!だけど、桃ちゃん。あなた、専門家のくせに答えられないだなんて・・・
桃 : ぐっ・・・
越 : しかもオレに聞いてくるなんて、先輩としての自覚ないんじゃないっスか?
桃 : オメーだって答えられなかっただろ!!
越 : オレは専門家じゃないもん。
管 : そういうこと。桃ちゃんの負けだね、これは。
桃 : チキショー!!!
       (桃ちゃん、明後日の方向に向かって猛突進)
管 : ・・・と、いうわけで。
     さん、ここまで読んでくださってありがとうございました!
越 : 感想とかが合ったら気軽にメールやBBSに書いてよ。待ってるから。
管 : それでは、また新しい作品ができたら読んでくださいね。 




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