疑問     その一



 「桃城。」
 「ひ、ひぃ〜・・・

       うぎゃ―――!!



 今日も今日とてコートに響き渡る絶叫。
 そして、そのコートの傍らで両手を胸の前で合わせて空を仰ぐ少女が一人。

 「ああ。また今日も一人の選手が星になったのね。」
 「勝手に殺すな!」
 「あ、桃。」

 気がつけば少女、二年生マネージャーのの隣には青白い顔をしたレギュラーの桃城がたっていた。

 「お疲れ様、桃。災難だったね。」
 「おー・・・あれはヤベーよな、ヤベーよ・・・」
 「うん。だよね・・・」










 沈黙。










 「って、そんなことより水くれよ!水!!」
 「チッ、気がついたか。」

 必死に水を求めて手を差し出す桃城を見ては残念そうに顔をそらした。

 「お〜ま〜え〜な〜〜〜!!!」
 「あはは。ゴメンゴメン。はい。」

が笑いながら水の入ったボトルを渡すと、桃城はそれをものすごい勢いで飲み干した。

 「ふーっ。助かった・・・」

 ぐったりと地面の上に座り込んでやっと一息つくことができた様子の桃城。
 その様子を隣で見て思わずは苦笑をもらしてしまった。
 ある人物を除いたテニス部員たちは何度飲んでもあの汁の味には慣れないらしい。

 「大丈夫?」
 「死にそうだぜ・・・」

 心配して声をかけてやってもうつろな目と弱々しい声で答えが返ってくるのはいつものこと。
 はじめのうちはその余りにものすさましい、光景に思わず逃げ出しそうになっていたが、
 今では犠牲者のことを気にかけられるようになった
最近この違いに気がついたは友達に男テニのマネージャーになったことによって
 精神的に鍛えられたと語っていたのは彼らにはまだ知られていない。



 「それじゃあ、死にそうな桃城君に回復するいいお薬を上げよう!」

 少しおどけた感じでがいうとポケットの中に手を入れてから軽く握ったそれを桃城の前に差し出した。

 「なんだ?それ。」
 「乾先輩には内緒だからね。」

 そう言って桃城の手のひらに落とされたのは小さなアメ玉。

 「マジ?助かるぜ。サンキューな!」
 「いえいえ、どういたしまして。」

 桃城は礼を言うとすぐさまラッピングをはずして自分の口の中に放り込んだ。





 瞬間、






 うぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!





 「い、いまのは・・・」
 「あ〜。またお星様が一つ・・・」

 二人が呟いたのと同時に、突風のごとく二人の元へと飛んできたのは、

 「ちゃん、ちゃん、ちゃ―――――ん!!!
 水ちょーだい!水、水、みーずぅ〜〜〜〜〜!!!」

 「英二先輩!ハイ、どうぞ。」

 菊丸は差し出されたボトルをひったくると、それをものすごい勢いで飲み干した。
 一息ついてその場に沈んでいった菊丸。
 すると彼は何かにピクンと反応して桃城のほうを見た。

 「桃、なんかいい臭いがするにゃ。なんか食ってる?」
 「あ〜。アメっスよ。さっきにもらったんっス。」
 「そうにゃの!?」

 桃城の返事を聞いた菊丸の顔が少し明るくなったのはおそらく気のせいではないだろう。
 彼は聞き終わると勢いよくの方に振り返りうるうると目を潤ませながら視線を投げてきた。
 顔中に『オレにもちょーだい』と書いてある。

 「はい、どうぞ。まだいっぱいありますから大丈夫ですよ。」
 「ありがとにゃ〜、ちゃん!」

 やはりものすごい勢いでアメに飛びついてくる菊丸。
 アメを口に含んだ途端、その表情はとても幸せそうな物へと変わっていった。

 「ふにゃ〜・・・生きかえるぅ〜・・・」
 「クックックッ。なんかオヤジくさいっスよ、英二先輩。」
 「ムッ!言ったな〜!桃め!コノ、コノ!」
 「いて、いて。いたいっスよ!英二先輩!」

 ちょっとわざとすねてみていつも越前にやるようにペケペケと軽く手刀を入れる菊丸。
 桃城も別に痛いわけでもないのに痛がるふりをしながら笑い声を上げていた。
 やはり普段テニスをしているときは真剣な顔をして少し大人びて見えることが多いが、
 こうしてじゃれあいながら笑いあっている様を見ると、やはり同じ中学生なんだなと実感し、
 思わず微笑んでしまうだった。









 「・・・それにしても・・・」

 目の前の二人のじゃれ合いが一段落すると、はポツリと口を開いた。

 「乾先輩って、いつどうやってあの乾汁を開発したんでしょうか?」



 これは前々からが感じていた疑問。



 「さー?知らにゃい。」
 「最初に持ってきたときの前日に適当にいろんなものブチ込んだんじゃねーのか?」
 「んにゃ、レギュラー落ちしたショックのあまりに何かを作らなきゃやっていけなかったんだ!」

 好き勝手言っている桃城と菊丸。
 二人は明らかに楽しんでいた。

 するとがまたぽつりともらした。
 「ん〜・・・となると乾先輩ってすごいですよね。」

 「っす、すごいというか、なんと言うか・・・」
 「だってそうじゃない。乾先輩はレギュラー落ちした約二日後の練習にはもうあの汁を持ってきてたのよ?」

 「だな。」
 『だからそれがなんだ』と思いながら相槌を打つ桃城。

 「で、乾先輩にこの前聞いたんだけど、先輩はあれの栄養バランスを計算しつつ、
  様々な考慮をしながらあれを作り出したらしいんですよ。」

 「ふーん。」
 『乾らしいな』と思いながら隣にいる人物と同じように相槌を打つ菊丸。

 「それって、すごくありません?」

 「「いや、だからなにが!?」」

 の言いたいことが全然わからない桃城と菊丸の声が見事にハモった。
 そんな二人の反応を見ては何で解らないのかな〜、と口を尖らせた。

 「つまりですね、あの乾汁は乾先輩なりに色々と栄養とか味とか計算した上で製作された努力の賜物なんですよ!
  それをハードな練習をこなしながら学業もやって、その合間に材料かって、栄養分計算して、材料切り刻んで、
  ミキサーにかけて、それを持ってきてるんですよ?それもみんなのために。」


 「「いや、明らかに自分のためだろ!」」


 の発した問題発言に慌てて訂正を入れる二人。

 「とりあえず、たった二日間であれを作れるだなんて、ある意味すごくありません?」


 ここでがあえて桃城と菊丸の訂正に否定も肯定もしなかったことは目を瞑っておこう。


 「一体、乾先輩はいつの間にあれを考え出したんだろう?」

 真剣に考え込んでいる
 本人はいたってまじめに考えているのだが、桃城と菊丸は興味がない。
 というより、『そんなことよりももっと重大な疑問がこの部にはワンサカあるだろ!』と心の中で突っ込んでいた。

 「この三年間ずっと考えてたんじゃにゃいの?」
 「『三年間』といいますと?」
 菊丸の言葉に顔を上げる

 「いや、だからずっと前からコツコツといろんにゃデーターを集めていて・・・」
 「ずっと試してみたかったんだけど、ずっとチャンスがなくって・・・」
 「んで、今回チャンスとばかりにそれを実行した・・・ってことっスか?」
 「うん。」









 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
 「・・・・・・」

 思わず三人は黙り込んでしまった。

 それぞれの脳裏には三年間ずっとコツコツとデーターをためて、ニヤニヤとそれをノートにまとめ、
 それを見ながらミキサーを回している乾の姿が・・・





 「・・・なんかオレ、寒気がしてきたっス。」
 「・・・オレも・・・」
 「うわー!鳥肌たっちゃってるー!」
 「お?本当だ!」

 が目の前に自分の腕をかざすと桃城もそれを見て騒ぎ出す。
 テニスコートのこの一角だけが妙に騒がしくなっており、周りの目が彼らに向けられているのに三人は気がついていない。

 「うげぇ〜。オレもちょっと鳥肌になっちゃってる〜!ちゃんのせいだぞ!」
 「え〜!」
 「そうだぞ!変なモン想像させやがって!」
 「そんな!変な想像したのは桃の勝手でしょ!
  それに興味があったんだからしょうがないじゃないの!!」





 「そうか。はそんなにこの乾汁に興味を持ってくれたのか。」





 突然、後ろから聞こえた低い声。あの独特な雰囲気を持つ人物はこの部には一人しかいない。


 「い、乾先輩・・・」

 恐る恐ると後ろを振り向く
 いつの間にか桃城と菊丸はの後ろに隠れていた。

 「!そんなにこの傑作に興味があるのなら、是非、試してくれたまえ!」
 「イ、 イエ・・・結構です。」
 「遠慮なんていらないぞ。さあ、飲んでみたまえ!」
 「いや、遠慮なんてしてませんから!」
 「だが興味があるのだろう?」
 「確かにありましたけど、でも・・・」

 何とか逃れようとする
 乾はそんな彼女の反応を見ながらもさあ、さあと緑の液体を進めてくる。












 「あーあ。、捕まっちまいましたっスね。」
 「うん。ゴシューショーサマってね。」

 いつの間にかの後ろから消え、少し離れた場所に移動していた桃城と菊丸。
 そしてと乾の方を見ながら安心しきって話し合っていた二人の背後にも忍び寄る影があった。



 「菊丸。桃城。」



 「うにゃっ!」「うげっ!」
 「随分と楽しそうだな。」
 「て、手塚・・・」「部長・・・」

 振り向いて後ろに立っていた人物の姿を確認したとき、
 二人の周りの温度だけが急激に下がったのはおそらく気のせいではないだろう。

 「休憩はもうとっくに終わっているぞ。」
 「「アハハハハ・・・・・・」」

 次に来る言葉を予測して乾いた笑みを浮かべながら後ずさりする二人。
 自らの耳を両手で塞ぎたいという衝動にかられていたが、
 そうするとますます今の状況が悪くなるのでどうにかそれはとどめる。







 「グラウンド10週だ!!」






 「「はいぃ〜〜〜〜〜!!!」」



















今日も青学男子テニス部は平和だった。











<アトガキ>

管 : 疑問シリーズスタートでーす!!(>▽<)
菊 : あー、つかれたにゃ。
管 : あはは、10週お疲れ様。
桃 : はー・・・さすがに乾汁、飲んだ後はキツイよな、キツイよ。
管 : 私だったら飲んでも飲まなくっても10週はきついよ・・・
菊 : 体力にゃいもんにゃー、お前は。(^ー^)
管 : ううっ・・・人が一番気にしていることを・・・
桃 : まーまー。事実なんだしあきらめろ。
管 : な、なのをう!絶対あんた達なんかよりも体力つけてやるー!!!(>п<)
桃 : あー、ムリムリ。
菊 : お前一人で体力づくりなんてする気なんてにゃいでしょ。
管 : う・・・
桃 : それにこれ以上たくましくなってどうなんだよ。
管 : う゛っ・・・
菊 : 絶対無理だよーん!
桃 : できもしねーこと言うなよな。
管 : ふ、二人とも・・・酷い・・・(T△T)
菊 : 本当のことにゃ!
管 : こ、こうなったら・・・
菊 : 『こうなったら』?
桃 : ま、まさか。部長に言いつけるとか?(・・;)
菊 : 乾の『スーパー乾汁』の開発に協力するとか!?(゜△゜;)
管 : あー。その手もあったか。ありがと、教えてくれて。(メモメモ書き書き)
桃 : って、メモるなー!!
           バッ (メモ帳と鉛筆をひったくった。)
管 : あ゛!どろぼー!!!
菊 : で、本当はにゃにしようと思ったの?
管 : ん?私の華麗なる『アクロバティックもどき』と『ジャックナイフもどき』で色々と・・・(^ー^)
菊&桃: え゛?
管 : やろうと思ったんだけどもどうせ効かないと思ってたから何しようか考えてたんだv
桃 : そしたら都合よく俺たちがいろいろと言ったと?
管 : そういうことv早速あの二人のところへ行かなくっちゃ☆別にメモなんてなくっても内容覚えてるしー♪
     二人ともありがとねー♪
         (ウキウキと退散。スキップ付き)
菊 : にゃー!桃のバカー!!アイツのことだからきっとあることないこといっぱい言って
     10週どころじゃすまなくなっちゃうにゃー!!
桃 : 英二先輩!そんなことでわめいてる暇があったら早く追いかけましょうよ!
菊 : はっ!そうだった!いくぞ、桃!
桃 : おう!!!

(こうして、管理人は本物の『アクロバティック』と『ジャックナイフ』の餌食になりました。)(え?)



手塚 : 。色々と騒がしくてすまなかった。侘びを言う。
     この『疑問シリーズ』とやらは管理人がまたわけのわからん疑問を思いついたら更新するらしい。
     下らん内容だが、できたらまた見に来てやってくれ。
     連載のほうもそのうち更新するらしいからそっちのほうも見に来てくれると嬉しいとのことらしい。



菊丸 : あ゛ーー!!にゃにオイシイトコ取りしてるにゃ!
桃城 : 部長ーー!ズルいっすよ!!



手塚 : 二人とも、町内50週!!

菊&桃: げっ・・・




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