ユニウス・セブンを破壊する。 やらなければならないことではあると解ってはいるが、心がついていかない。 いくら軍人として多少訓練されていたとはいえ、自分の母が眠る場所を破壊するのだから当たり前だろう。 はしかし、思いの外静かな自分の心にも驚いていた。 この感覚は前にも味わったことがある。 「。」 耳によく馴染む声に振り返る。 「アレックスさん、代表はもういいんですか?」 、いやの徹底ぶりにアスランは苦笑いを浮かべた。 「大丈夫か?」 なにが、などとは聞かなくても解った。 「意外とね・・・」 居心地の悪い空気が辺りを支配する。 当たり前だ。 その空気を打ち消すかの様に、はわざと明るい声を出して話題を変えた。 「カガリに飲み物でも取りに来たの?」 「ああ。」 「じゃあ、案内してあげる。」 「ああ、頼む。」 不思議と食堂へ向かう道のりでは誰ともすれ違うことはなかった。 それだけ艦全体が重苦しい空気に包まれているのか、 それとも突然の事態に慌てているせいで食堂方面に行く余裕がないのか・・・。 「兄さま。」 不意に話し掛けてきた妹にアスランは短く反応を返した。 「私、実は前にユニウス・セブンに降りたことがあるの。血のバレンタインの後に。」 アスランは驚いた。 あの事件の後、すぐに戦争は始まった。 一体はいつあの場所に訪れたのか。 しかし、よく考えてみれば、一度だけチャンスがあったことを認識する。 そう、彼女がキラ達と共にアークエンジェルに乗っていた時だ。 「不思議ね。 心の中はざわついているのに、頭の中はひどく冷静なの。 調度あの時と一緒だわ。」 そう話すの瞳はどこか遠くを見ていた。 「とても静かな場所だった。 なにもない死の世界。 でも、確かにかつて人はそこに住んでいた。」 アスランは黙って妹が話すその光景を思い浮かべた。 血のバレンタインから、何気なく避けていたあの場所。 その場所で、母と過ごした在りし日々を同時に胸に甦らせながら。 「降り立った時、寒気がした。身体中が震えてた。 扉を開ければ時期を止められた人々がそこにいた。 ・・・あの時、艦長がね、気を利かせてくれて、お母様にも会いに行ったの。」 アスランはそれを聞いて弾かれたようにの顔を見た。 「逢えたのか?」 尋ねた声は自分でも驚く程静かな響きがした。 返ってきたの肯定の返事も同じだけの静かさを持っていた。 「とても安らかな顔をされていた。せめてもの救いね。」 「そうか。」 たどり着いた食堂には、やはり誰もいなかった。 お陰で二人は兄妹として会話を続けることができた。 「その後も不思議とナチュラルに対する怒りは無かったわ。 私が知っているナチュラルの人たちはとても良い人たちだったし。 アークエンジェルにいて、クルーの人たちもとても良くしてくれた。 地球軍は許せなかったけど、あの人たちは好きだった。」 そう話すの顔はとても静かなものだった。 きっと当時の彼女はとても複雑な思いを胸に抱き、アークエンジェルに乗っていたのだろう。 連絡が取れていなかったとはいえ、彼女はユニウスセブンで母が暮らしていることは知っていた。 血のバレンタインのあの日、ニュースを見てアスランはナチュラルに対する怒りを戦場へ赴くという方法でぶつけた。 しかし、は中立国のコロニーであるとはいえ、ナチュラルに囲まれたヘリオポリスにいたのだ。 コーディネーターであるキラとの共通の友人も多かった。 それがどれほど複雑な想いを彼女の中で生み出していたのか・・・ しかし、は一人の人として自分を見てくれる彼らを人として好いていた。 もちろん、それだけが彼女を支えていたわけではない。 アークエンジェルの艦長もその他のクルーもとても心やさしい人だったからこそ、 は自分を見失わずにいられた、とアスランは思っている。 兄として、意図していなかったにせよ妹の心が間違った方向へ行かぬよう支えてくれた彼らに感謝したいくらいだ。 だからこそ、は今でもまっすぐな瞳を持ってるのだから。 しばらく閉じられていたの瞳は開かれたとき、そこには強い決意の光を宿していた。 なにを決意したかは、聞かずとも解る。 「私ね、兄さま、やっぱりユニウスセブンを破壊するしかないと思う。」 「ああ。」 静かに呟かれた言葉には強い力がこめられていた。 「お母様が眠るあの場所を、壊すのはとっても心苦しい。 でも、お母様だって、たくさんの罪のない人々が命を失うことをきっと嫌がるはずよ。」 「俺も、そう思っている。」 自分も、同じ決意を胸に宿しているのだから。 笑顔を交し合った二人は、そのまま食堂で別れた。 それぞれの決意を胸に、その場を離れた二人はしかし、 再びドックで顔を合わせることとなる。 母を送るのならば責めて自分たちの手で・・・ そう思い同じ行動をとったのはやはり兄妹だからか。 アスランはオーブ代表の護衛役として。 そしてはミネルバのメカニッククルーとして。 それぞれかぶっていた偽りの仮面をはずし、 ユニウスセブンの破損作業を手伝うパイロットのヘルメットをかぶる。 久しぶりにかぶったそれは意外に重たく感じた。 宇宙へとつながるカタパルトに機体が移動する間、は静かに瞳を閉じ、心を固める。 艦を飛び出して見た宇宙は、 どこかさびしそうに見えた。 |
<コメンツ> 突発的に書きましたガンダム運命夢! ごめんなさい、突発的過ぎて、いろいろと解りにくいですよね!?(聞くな) というわけで、少しばかり説明を・・・ ヒロインはアスランの妹。 母レノアの計らいで彼女は身分を隠して留学生としてヘリオポリスにいました。 が、キラと共にアークエンジェルに乗艦することに・・・ 後にパイロットとして戦場を駆け巡りました。 戦後はとある目的でザフトの軍属メカニックとして偽名を使って入り込んでいます。 以上説明終わり! ここまで読んでくださってありがとうございました! ご感想があればメールまたはBBSに書き込んでくださるとうれしいです!! |
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