任務を終えてホームへ帰ってきたラビとアレンは入手したイノセンスを届けるために科学班の元へ歩いていた。 暗い廊下を抜けてたどり着いた広い部屋には、相変わらず忙しなく動き回る白衣が多数。 眼の下にクマをこさえながらも「おかえり」と力なくかけられる声を聞くと、「帰ってきた」となぜか実感する。 「ただいま」と返事をしながら進んでいくと、この場には少し似つかわしくない明るい声が自分たちを呼び止めた。 「アレン君!ラビ!お帰りなさい。」 「リナリー、ただいま。」 忙しない科学班の癒し。 笑顔を振りまきながらコーヒーを配る彼女の姿はまさに彼らにそう見えるのだろう。 彼女はアレンとラビの無事な姿を確認し、とてもうれしそうな笑顔で近づいてきた。 だんだん距離が縮まるとともに、リナリーの顔がいつもよりもそわそわしているように感じ、アレンは少し疑問に思った。 「ラビ、が帰ってきてるわよ!」 「マジ?」 「ええ。今部屋で休んでいるわ。」 「そんじゃ、あとで顔見に行くさ。あんがとな!」 リナリーと言葉を交わした後、心なしかラビの顔もいつもよりうれしそうにほころんだ気がした。 おそらく、その「」と呼ばれる人物のせいだろうとアレンは判断した。 しかし、いままでそんな人物の名前を聞いたことがない。 これほどラビとリナリーを喜ばせる人物がいったいどんな人なのか少し気になってアレンは二人に尋ねた。 「あの、「」って誰ですか?」 「そっかそっか。アレンはまだ会ったことねーんだよな。」 ラビの顔はいまだに嬉しそうにほころんでいる。 「は私たちと同じエクソシスト。 ずっと長期任務に出ていて、昨日帰ってきたのよ。」 「へぇ〜・・・どんな人なんです?」 「ん〜・・・・・ ちょっとだけ女版コムイみたいな感じさ。」 「え?」 先に言っておこう。 アレンは決してコムイが嫌いではない。 むしろ、好きな部類に入るだろう。 しかしながら、なぜかラビに「」と呼ばれる人物が「女版コムイ」と称されたことに・・・・ ・・・・戸惑いを感じた。 「コムイさんの女の人版って・・・一体どんな人なんだろう・・・」 アレンは自分の荷物を片付け終えて食堂へ移動しながら、ティムキャンピーに話しかけた。 アレンの中のコムイといえば、優しい頼りになる存在ではあるのだが・・・ まあ、少々・・・・・ ・・・・・・遊ぶことが大好きな大人、というイメージが強い。 まあ、いい意味で子供心を忘れていないとも言える、がたまに度が過ぎてしまう。 そして、「女版コムイ」といわれた瞬間、なぜか頭はどうしてもそちらのほうに向いてしまうわけで・・・ 正直、アレンには想像ができないのであった。 まあ、無理もないが。 アレンは少々自分の頭の中で考えをめぐらせながらも、自分の腹の虫を抑えるために食堂へ足を踏み込んだ。 ジェリーに大量の食事を渡され、テーブルにそれらを抱えて移動する途中、 アレンは普段見かけない人がファインダーと話をしている姿を見かけた。 白い服に囲まれた食堂で、自分と同じような黒い団服を身にまとっている姿は当然目立つ。 そして、それまでみたことのない明るめの茶色い髪は、自分が今まで接触してきたエクソシストではないことをすぐに教えてくれた。 おそらく彼女が「」であろうと思いつつも、向こうは向こうでファインダーと会話をしている最中だし、 なにより自分は自分で胃が何か入れてくれと大騒ぎをしている最中だしで、とりあえず抱えている食べ物を食すことにした。 アレンが座っている位置からは彼女の表情などは見ることができない。 それでも、スッとした姿勢のいい立ち姿や、リナリーほど長くはないけれど 少し低めの位置でポニーテールに結わえられた流れるストレートの髪は素直にきれいだと感じた。 「!ここに居たんか!」 不意に後ろから響いた聞こえた声がその場の注目を集める。 見ればつい先ほどまで一緒に任務をしていた少年だ。 「ラビ。」 「お、アレン!・・・すっげー量だな。」 ラビの目線の先は毎度おなじみ、料理の山。 アレンはそれに対してニッコリと笑い、「ジェリーさんの料理、久しぶりですから!」と答えた。 「ラビ、久しぶり!お帰りなさい!」 そうこうしているうちに先ほどラビに呼ばれた少女がすぐ近くに来ていた。 「おう!もお疲れさん! 帰ってくんのすっげー久しぶりじゃね?」 「う〜ん・・・前にラビと会ったとき以来かな?」 「んじゃ、3ヶ月くらいか・・・相変わらず長期任務ばっかりだな〜」 つーか今回のはやけに長くねーか?、とラビは続けた。 という少女はかわいらしい声で笑うと、ラビの横にいたアレンに眼を向けた。 「初めまして。もしかしてあなたがアレン・ウォーカー君?」 「はい!アレン・ウォーカーです。」 「・です。 ホームを離れている間に新しいエクソシストが入ったって聞いて、お話してみたいって思ってたの。」 にっこりっと向けられた笑顔はとてもかわいらしい。 握手を求めて差し出された手も、なんとなく暖かさを感じることができた。 「、任務からはいつ帰ってきたんさ?」 「昨日の真夜中!だから今日寝坊しちゃった!」 肩をすくめながら言う姿も、彼女がとても明るい性格の持ち主であることをうかがわせる。 「ま、しっかり休んだみたいだから良かったさ! お前時々帰ってきてもしっかり休まねーからな・・・」 「あら?ちゃんと休んでるよ?」 「列車の中で寝ることは『しっかり休んでる』とは言いませ〜ん。」 すかさず返ってくる声に対して、は苦笑いを浮かべていた。 そして、そのままそれは仕方がないことだと彼女は続けた。 「いつも長期任務ばかりなんですか?」 「ん〜?まぁね!今回は北欧の国をいくつか回ってきたの。」 「はイノセンスの能力の関係で長期任務に出ることがどうしても多くなっちまうんだよな。」 「数ヶ月ホームを空けるなんてしょっちゅうなんだ! だからたまたま帰ってきた時期に新しい仲間に会えてよかった!」 の話によれば長期任務の後に必ず数週間はホームで休養を貰えるらしいが、 だからといって必ず逢いたいと思う仲間たち全員に会えるというわけではないらしい。 だからだろう。 先ほど彼女がファインダーたちと話している姿はとてもうれしそうに見えた。 でも、なぜかアレンには今ラビと一緒に話している彼女がファインダーと一緒に居るのとは少し違って見えた。 年が近いせいだろか? 二人はとても互いに気心が知れていると、今日はじめて彼女に会ったにも関わらずそう感じとることができた。 そのまま共にちょっと遅めの昼食を食べた三人。 明るく話しかけてくると、楽しそうに笑うラビ。 そんな二人に囲まれての昼食はとても楽しかった。 そして、二人と別れて部屋に戻ったアレン。 気になっていた少女とファースト・コンタクトを取ったわけだが・・・ 自分の周りを飛び回るティムキャンピーに向かい一言つぶやいた。 「ティム・・・やっぱりさんがどこがコムイさんに似ているのか分からないよ・・・」 アレンはこのことについて考えながらその日を一日過ごしたようだ。 彼がこの疑問に対する答えを得ることがあるのかは、今のところまだ分からない。 |
<コメンツ> さて、アレン君と初接触で始まりました、この連載。 果たして彼女はどういった人物なのか? うまく表現ができるかどうか、既に心配な管理人です! とりあえず、がんばります! |
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