「それでは殿、実際にやってみましょう。」 の死神化が進み魂魄が安定し始めた頃、浦原の強い薦めで は霊圧のコントロール及び自らを守る術を身に付ける一貫として鬼道の訓練を行うことになった。 教えるのはその道のエキスパートであるテッサイ。 浦原は主に監督役に回っている。 それというのも、テッサイが鬼道を教える際にかなり熱が入って 理論やら概念やらをあれこれに言って聞かせる為だ。 大人でも首を傾げてしまうそれに幼いが着いていける筈もなく、 行き詰まりそうになった頃合いを見計らって浦原が茶々を入れたり、 芸術的な絵で紙芝居を作って説明を加えたりして進行を手伝った。 どうにかなんとなーくが理解したと感じたテッサイがようやく実践に入ろうと口を開いたところで冒頭の台詞に戻る。 小さな子供には、習うより慣れろだという結論にようやく至ったのかもしれない。 「んじゃ、ちゃん、いきますよ?」 「はーい!」 まるで幼稚園の遠足のようなやり取りの後、浦原は杖の先での頭を貫き、魂魄を叩き出した。 叩き出された方のはニ、三回後ろに転がった後きゃっきゃっと笑い声をあげた。 数年後に魂魄を叩き出されまくる少年と反応が全く違うのは幼さ故か性格の違いか。 「それでは、先ほどお教えした鬼道の詠唱を。」 元気な返事とともに、は浦原が用意した的に向かって詠唱を始めた。 言っている言葉の意味を理解しているかどうかはまた別の話である。 「はどうの三十一、しゃっかほー!」 ちゅどーん! 元気な詠唱と同様にの放った鬼道は元気よく的を吹き飛ばした。 「いやー!すっごいっスねー!ちゃん鬼道の才能ありますよ!」 「ほんと!?」 「ええ!始めてであの威力はなかなかできませんって!」 の放った鬼道は見事に的を吹っ飛ばしていた。 それはもう見事に黒焦げで見る影もないほど。 ついでに的の背後にあった岩も跡形もなく消え去り、まっすぐで巨大な割れ目が地面にできている。 なかなかの威力である。 そして、浦原とがきゃあきゃあ喜ぶ中、先程の鬼道を見て肩を震わせる人物がいた。 テッサイだ。 「てーーんちょう!」 「ナンですか?」 「誉めてはいけません!」 「いーじゃないっスか。ちゃんはちゃんと鬼道を放てたんだから。」 「ちゃんと放っていないから誉めてはいけないんです!」 そう、が放った赤火砲は黄色かった。 おまけに「砲」のはずなのにビームのようなものだった。 テッサイからしたら全くもって許すことができない程に違ったものが発射されたことになる。 ここで突っ込み派の人間がいたら「気にするとこはそこかよ!」と 盛大に突っ込みを入れまくってくれるのだろうが、 非常に残念である。 「まあまあ、黄色なんて実にちゃんらしくって可愛らしいじゃないですか。」 「そぉーゆう問題ではありませんぞぉ!店長! 違う色の鬼道を放つなど本来ならばないことですぞ!?」 「そっすかぁ?じゃあ、いっそ名前着けちゃいましょう! 黄色のビームだから『黄光線』なんてどーでしょっ?」 話ながらどんどん楽しそうになっていく浦原とは真逆にテッサイの顔はどんどん険しくなっていく。 頭を抱えそうになるのをなんとかこらえ、テッサイはズズイッとの方に体を向ける。 突然テッサイに詰め寄られたは当然驚いて彼を凝視する。 「殿!」 「はいっ!」 「よいですか!鬼道には霊圧のコントロールが最重要要素! 殿にはこれからそれを徹底的に習得していただきますぞ!!」 この後、テッサイによる猛特訓が始まる。 もともと素質があったのか、はコツさえ掴めばすいすいと鬼道を通常のように放つことができるようになった。 また、浦原が面白がってがそれまでに放ったいくつかの失敗鬼道を こっそりと技としてほぼ確立させられるよう練習させ、テッサイを悩ませたのはまた別の話。 |
<コメンツ> 『勿忘草旋律』番外編、ヒロインのその後のお話をお送りしました。 といっても特訓編。 脈絡なし。 オチもとくになし。 でも私は書いてて楽しかった!(^▽^)ノ☆ という、自己満足いっぱいの短編です、ごめんなさい。 気が向いたらほかのものも覗いていただけるとうれしいです・・・ |
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